父親と家事との関わり
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定年を過ぎて家に戻ってきた父親を、母親が温かく迎え入れる・・・。そんな光景が今ひとつピンとこない人は多い。「1日中父が家にいると母は相当苦痛だろう」(編集・33歳)、「2人で時間を持て余してイライラし合っている」(会社員・29歳)など、子供は冷静に不協和音を聞き取っている。br>
中高年の妻たちの投稿誌『わいふ』(グループわいふ発行)によると、長年夫が外で稼ぎ、妻が家で家事を受け持つという「役割」をこなしてきた夫婦には、定年後にツケがまわってくるという。毎日が日曜日の割に料理ひとつつくらず、掃除洗濯もしない大きな子供に行動をしばられ、妻は自由な時間が持てない。偉そうな分、子供より始末に負えない夫にイライラがつのるということらしい。しかし夫にしてみれば、還暦を過ぎてからいきなり「自分の食べる物くらい自分でつくれば」と言われても体が動かない。
とあるアンケート調査では「退職に関係なく家事をしている」と「家にいるときは家事をする」があわせて4割と、意外な高数値を示した。「歳をとれば夫婦が助け合うことは当然」などのスマート発言から、「家にいる限り何かをするしかない」「妻に夫の退職の恩恵を与えたい」など家事をする理由はさまざまだが、食器の後片付け程度で恩着せがましい気分になられたら元も子もない気がする。
そうはいっても「急にやれと言われてもできぬし、今さら覚えようと思わぬ」「必要とされていない」と開き直る人や「女子の仕事」と言ってのける人に比べれば問題ないほうだ。妻が病気になれば家事をするという当事者意識を欠いたオヤジに限って、妻から疎まれていても気付かない。知らず知らず無神経な行動をとり、濡れ落ち葉のごとく妻にへばりつくのはヒサンな末路である。
そんな父親の姿が予期できる人は、母親が本当に病気になってからではなく、「緊急時の予行演習」とか理由をつけて父親を台所に引き摺り出したほうがいい。
離婚したいと親が。
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両親の仲がよかろうが悪かろうが、子どもも一喜一憂する年齢ではない。とはいえ、実際に親が「離婚したい」と言ったらあなたならどう答えるだろう。
とあるアンケート調査では、実に3人に2人が「賛成」「理由によっては賛成」と答えた。「人生は結局その人の運。違う運をつかみたいと思うチャンスに恵まれたら、その方向に行くのもよいのでは」(会社員・30歳)など、親を1人の人間として考え流余裕が子どもの側にできているということだろうか。
傾向としては、両親の仲がよい人ほど賛成する率が高い。逆に「口では納得してみせても、心の中では絶対反対」(会社員・29歳)というように、実際に両親の仲が悪い人は反対に回るようだ。
親の離婚なんて切羽詰らないと真剣に考えられないのかもしれない。両親の仲がよい人が離婚に寛大なのは、おそらく「自分の親が」というより一般的なケースとしての離婚をイメージしているからで、いざ現実になるとすんなり賛成はできなくなる。子どもごころも複雑だ。
それでも中高年の離婚は増加の一途をたどっている。厚生省の統計によれば、同居20年以上の夫婦の離婚件数は23年間で、なんと6倍。全体の件数が2倍弱なのを考えるとかなりの増加といえる。この世代の夫婦は「企業戦士&専業主婦」が多く、若い頃から仕事を優先して働いてきた父親と子育てに励んで家事を1人でこなしてきた母親の間には、数十年もの共同生活の中でさまざまな溝ができている。
人生80年、1人分の食い扶持なら稼げる手段も多くなった今、2人で暮らすこれからの月日の長さが離婚に踏み切るひとつのきっかけとなるらしい。
日本経済新聞の「離婚にいたらなかった理由」というアンケートによれば、男女ともトップは「子どもがいるから」。やはり子はかすがいということか。
そのかすがいが独立していったとき、やっと離婚に踏み切れる親もいるのだろう。さらに父親は「世間体が悪い」「生活が不便」と続き、母親は「経済的に困る」。要するにお互いがまんしているだけ。愛想を尽かしながらも離婚できない夫婦の家庭内離婚は、水面下で静かに広がっている。